「みんなでお金を出し合ってパソコンを買ったんだけど、お金を出した人以外には使わせないと一筆書いておきたい。これって契約書?覚書?なんなの?」
日頃からお仕事などで契約にたずさわっていれば、ピンとくるものがあるかと思いますが、そうでないと契約書、覚書、念書の区別はなかなかつきにくいものです。
そこで、その違いを整理してみました。
ざっくり言えば、このような感じです。
契約書を作る前、作った後の合意を書面化したもの(②参照)
念書、誓約書、証書
契約を守らせるため、誓いなどを書面で提出させたもの(④参照)
協定書、合意書
契約書の細部や変更などについて合意を書面化したもの(③参照)
詳細は、目次の後で!

内容は同じでも「契約書」と書かれると身構えるのに、「覚書」と書かれていると軽い感じに思えるわ・・・
契約書・覚書・念書とは何なのか?
契約書、覚書、念書、合意書に協定書など約束を書面化したものには、さまざまな名前がついています。
ですが、ざっくりいえば、どれも契約書であり法的効力が発生します。
また、「念書」と書いてあっても中身が契約書であれば契約書として扱われます。
なので、どういうタイトルでも構わないところではありますが、一般的には下記のようなイメージや慣習で使われるため、これに合わせたほうがモメなくてすみそうです。
① 契約書って何?契約とどういう関係?
契約書は、契約を書面化したものです。
つまり、書面化されてなくても契約は成立するのです。
では、そもそも契約とは何でしょう?
『お互いの表示意思が一致し、権利と義務が発生する』と契約は成立します。
契約が成立する瞬間はいつ?
契約は、お互いの表示意思が一致した瞬間に成立します。
例えば、こんな感じです。
A:「そのお菓子を100円で売って」
B:「いいよ、あげる」
Bの「いいよ、あげる」と言った瞬間に、お互いの「買いたい」「売ってもいい」という表示された意思が一致します。
そして、表示された意思の一致すると同時に下記の権利と義務が発生します。
A:「Bさんにお菓子をもらう権利」と「Bさんに100円を支払う義務」
B:「Aさんに100円を請求する権利」と「Aさんにお菓子をあげる義務」
青い字は、お菓子についての権利義務、赤い字は、お金についての権利義務です。
契約書は作成していませんが、売るという意思、買うという、前述した『お互いの表示意思が一致して、権利義務が発生している』ので、これで「契約成立」です。
ですから、契約書の有無は契約成立とは、関係ありません。
② 覚書は、契約書をサポートする契約書!
覚書は、主に契約書を補足するものとして使われます。
契約書を作る前に合意した内容を書面化
契約書を作った後に合意した内容を追加する
というようなときに用います。
覚書の構成は、契約書と同じでOK!
覚書の構成は、契約書と同じで構いません。
もっとも、こうでなくてはダメというルールはないので、下記はあくまで例であり、これに固執することはありません。
覚 書
○○会社(以下「甲」とする)は○○会社(以下「乙」とする)は、△△について以下のとおり合意する。
記
第1条
第2条
以上を合意した証しとして、本書を二通作成し、甲乙署名捺印の上、各々一通を所持する。
平成○○年○○月○○日
甲 住所:
会社名:
担当者名: ○○ ○○ 印乙 住所:
会社名:
担当者名: ○○ ○○ 印
覚書の使い方 その1 ~契約書前後の合意書として~
上の例でいえば「このお菓子をBからAに売る」だけを覚書として書面化し、後から金額などを書いた契約書を作成します。
また、契約書作成した後に「明後日までに引き渡す」といった後になって気が付いたようなものを追加するときに用います。
覚書の使い方 その2 ~契約書の一部を抜粋~
契約書を多く作成する会社では、絶対に守って欲しい基本的なルールを「契約書」として使い、作業内容的なものを「覚書」とする会社もあります。
こうすると、フォーマットが使いまわせるうえに、契約内容に合わせて覚書を増減、変更するだけなので、ミスも少なくなり契約書の作成が楽になります。
覚書の使い方 その3 ~契約書の代わりとして~
「契約書」というと、杓子定規で小難しいイメージがあるので相手が身構えたり、拒否するかもしれません。
そこで、「契約書」という名前でなく「覚書」とすると、応じてくれるかもしれないので契約書の代わりとして使うケースもあります。
③ 協定書、合意書
協定書、合意書は、基本契約書などおおまかな契約だけ決まった状態から、細部についての決め事や、何かトラブルが発生し解決したときなど新たに話合った結果の証拠として用います。
覚書とよく似ていますが、覚書は少し簡単で軽い事項、協定書・合意書はより複雑で重い事項のイメージ。
覚書は契約書に付随する関係になることが多いのに対し、協定書、合意書は契約書には付随せず独立した関係にもなることもあります。
上の例でいえば「金額は100円としていたが消費税分を含む108円とする」など、後から合意したことを書き記します。
④ 念書・証書・誓約書は、一方通行
念書・証書・誓約書は、契約書や覚書と異なり、当事者の一方が他方に差し入れるものです。
そのため、他の書面には双方の署名捺印があるのに、念書には差し出した当事者の署名捺印しかありません。
念書などは、どういうときに使うの?
上の例でいえば、なかなかお金を払わないAに対して「明日までに100円払います」といった書面をBに対して提出させるといった感じです。
このとき問題になるのが、Aが手元にコピーや写真など何も残さなかったために、何を約束したのか忘れてしまう、わからなくなるケースです。
そうならないよう、Bは受け取るときに「コピーをとってますか?」と聞いておいたほうがいいかもしれません。
念書・証書・誓約書の構成は、契約書っぽくない!
念書などの構成は、契約書とはずいぶん異なり、わりとシンプルです。
念 書
私は、以下の内容を遵守(履行)することをお約束いたします。
記
1.
2.
令和○○年○月○日
住 所
氏 名 ◯◯ ◯◯ 印以 上
履行は、契約や約束などを実際に行うことで、契約書や法律関係の書類によく使われるので、覚えておくと便利です。
以上が、簡単ではありますがそれぞれの違いでした。
なお、繰り返しになりますが、契約は「お互いの表示意思が一致し、権利と義務が発生する」ものなので、口約束でも成立します。
従って、覚書であろうと契約は成立することに注意してください。
契約と約束の違いについて
契約と約束の違いは曖昧です。
「民法上の典型契約のように、国家が介入すべきもの」は契約、
「国家権力で強制するほどのことでもないもの」は約束、
と言われていますが、最終的な判断は裁判所に委ねられています。
上の例を用いると
「お菓子を売ってあげる!」
というのは、売買契約が成立するので契約になりますが、
「一緒に帰ろう!」
というのは、国家権力で強制するほどでもないので約束になります。
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