遺言書のイメージと現実
「村田っ、紙と筆をここに持って参れ」
「かしこまりました」
「旦那様、こ、これは遺言書・・・」
「わしが死んだら、あとを任せる」
みなさんがおっしゃりたいことはよくわかっております。漫画とテレビの見過ぎですね。
とはいえ、遺言書といえば “高齢の金持ちが作るもの” と思っていませんか?
日本財団が遺言書を作成している日本全国40歳以上の男女200名を対象に行なった2016年の「遺言書に関する調査」によると遺言書を作成した時期は
40代・・・23%
50代・・・23%
60代・・・35%
と、40代~60代が全体の約8割を占めています。また、資産の額は
1000万円以下・・・37.5%
5000万円以下・・・32.0%
と、5000万円以下が全体の約7割を占めています。
資産5000万円以下では秘書の村田は雇えないので、遺言書は “高齢の金持ちが作るもの” という私のイメージとは異なるようです。このことから、遺言書のことを詳しく知ると “高齢の金持ち” でなくても遺言書が必要だと感じるようになる、ということなのかもしれません。
メリットがあるからこそ遺言書
そもそも遺言書を作成するメリットとは何でしょう。
お金と労力をかけてまですべきものなのでしょうか。
そのあたりを調べ、メリットを3つピックアップしてみました。
◯ 手続きが簡単になる
① 銀行口座の凍結解除
お亡くなりになった方の銀行口座は凍結されます。凍結を解除するには、ほとんどの
銀行で遺産分割協議書(相続人全員がこの分配で合意したという書面)か遺言書が
必要になります。つまり、遺産分割協議が不調に終わると凍結解除ができません。
また、遺言書がないと銀行によって遺産分割協議書だけでなく相続人全員の実印と印
鑑証明書を求められるところもあります。遺産分割協議後にあらためて実印と印鑑証
明書をお願いするのは仲が良くても頼みにくいものです。
② 不動産登記の変更
例えば、相続人が5人いたとします。「◯子に下記マンションを相続させる」という
遺言書があれば、◯子さんは他の相続人がいても1人で相続登記ができます。
ところが、遺言書がないと5人全ての書類や実印が必要になります。つまり、誰か
1人でも書類を揃えなかったり印鑑を押さなければ登記ができず、売却することもで
きません。(なお、登記は司法書士の仕事なので当事務所ではできません。)
◯ 国が決めたルールを無視できる
① 相続分のルールを無視できる
相続の配分は民法で定められていますが、これと異なる配分をすることができます。
お金のみならメリットをあまり感じないかもしれませんが、不動産や宝石などが混在
してくると価値の算定をしなければならず民法通り分けるのは面倒です。
② 相続人のルールを無視できる
相続人も民法で定められていますが、これと異なる人や団体に財産をあげる(遺贈)
ことができます。単にあげることもできれば、犬の世話をしてくれるならと条件付き
であげることもできます。
◯ 相続トラブルを高確率で回避できる!
どんな対策しておいても、争いになるときはなるので遺言書があっても絶対に相続トラブ
ルが起こらないとは言えません。ですが、お菓子を一皿に盛って「仲良く分けなさい」と
子供達だけに出すよりも最初から分けておいて親が監視したほうがモメる可能性は少ない
と思います。
相続も「仲良く分けなさい」と遺産分割協議をさせるより、遺言書で分配しておいたほう
が不満があっても争いにはなりにくいでしょう。
遺言書は若いうちに書くべし
遺言書は、民法と違うことをするため書き方などルールを守らないと無効になります。
一例ですが、こんな場合は無効になります。
× 押印がない、日付がないなど形式的に不備がある
× 情報不足で財産が特定できない
× 自筆証書遺言が自筆でない
× 認知症などで遺言能力ない
注目していただきたいのは、赤字の2つです。
歳を重ねると体が思うように動かせなくなったりするもので、自分の名前くらいは書けても長文を書くのはしんどかったりします。また、認知症は遺言書界最強と言われる公正証書遺言ですら裁判で無効になったケースがあります。
つまり、もういい歳になったので遺言書でも書こうか・・・と思っても手遅れになる場合もあります。また、遺言書を書いているうちに「死」がリアルに感じられ、暗い気持ちになりやめてしまう方もいらっしゃいます。ですから、若いうちに書いておいたほうがいいです。
遺言書は、大切な人へのラストサプライズ!
当事務所では、そんな遺言になるような仕掛けもご提案しています。
特に若いうちに作成すると人生観変わります。
あとがき
私が生まれる前に亡くなった父方の祖父は晩年に遺言を残そうとしたものの、気がついたら何を言ってるのかすらわからない状態だったので遺言どころか必要な情報が全く伝わらなかった、と父が言っていました。
やはりそうなる前に書いておくのがいいのですが、若いうちに書いておき、結婚、出産、マイホーム購入、転職、退職などライフイベントごとに見直すのが少し面倒ですが人生を見直す機会としていいのでは?と考えています。また、そうしたくなるような遺言書をご提案できるよう心がけていきます。
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