それは遺言書でなく遺書ですよ?
遺言:『私の家は、娘にやる』
そもそも「遺言」ってどう読んでますか?
「遺言」は三省堂の「新明解国語辞典」ではこのように書かれています。
【ゆいごん】
死後の処置について身寄りのものなどに言い残すこと
法律用語としてはいごん
また法律家がちょっと気取った言い回しをしているのか!と思われるかもしれませんが、そういうことだけではないようです。わかりやすくするためにイメージ図にしてみました。
“いごん”は “ゆいごん”のうち、法律的に効果があるもの(義務になるもの)を指します。お兄ちゃんと仲良くしなさいと書かれていても、仲良くしなかったからといって裁判になることはありません。しかし、土地をお兄ちゃんに相続させると書かれていれば、従わないと裁判にすることができます。
遺言書と遺書の区別がつくとこの図がなるほど!となる・・・かもしれないので、少し頭に入れておいてください。
遺言書と遺書は似て非なるもの
遺言書と遺書の違いの区別ですがイメージ図を作ってみました。
遺書は、家族や関係者に対して自分の気持ち、ちょっとした頼みごとなどを手紙などに託したもので、サスペンスドラマの終盤に「実は◯◯(犯人)のことをこんなに想っていた」みたいな感じで使われるものです。残された人への「手紙」「ラブレター」なんて言い方をされる人もいます。
一方、遺言書は家族だけでなく第三者に対しても「民法でこのように財産を分けるのが一番よいと書いてあるけど、私はこうしたいので認めてください」とか「この子を認知します」など下記の法律行為について認めてもらうよう申請するものというイメージです。申請書に近いので、書けることや書き方にも決まり事があります。
◯ 相続に関すること
・ 推定相続人の廃除と廃除の取消し
・ 祭祀主宰者の指定
・ 相続分の指定
・ 特別受益の持戻しの免除
・ 遺産分割の方法の指定お呼び分割禁止
・ 遺産分割における担保責任
・ 包括遺贈および特別遺贈
・ 遺言執行者の指定
・ 遺贈の減殺方法
◯ 相続外の事項
・ 認知
・ 未成年後見人の指定
・ 未成年後見監督人の指定
冒頭に書いた『私の家は、娘にやる』は、相続分の指定なので遺言書として認められる・・・
ことは恐らくありません。なぜなら「家」はどこの「家」なのか、「娘」は誰なのか第三者にはわからないからです。(一人娘に見えても隠し子がいるかもしれない) 家や土地は戸籍どおり、人は長女◯◯(平成○○年○月○日生)など書き方に注意が必要です。また、方式と種類も下記のようになっています。
◯ 普通方式
・ 自筆証書遺言
・ 公正証書遺言
・ 秘密証書遺言
◯ 特別方式
・ 一般臨終遺言
・ 難船危急時遺言
・ 伝染病隔離書遺言
・ 在船遺言等
では、遺言書に規定以外のことを書いてはいけないのかといえばそうでもなく、「付言事項」として家族への想いなど遺書っぽいことも書くことができます。
ところで、遺言書は形式に問題がなければ書いたことは全て叶うのでしょうか?答えは、NOで相続人が全員一致すれば遺言書の内容と異なる分割もできます。そうならないように「付言事項」や「遺書」「エンディングノート」などで、なぜそのような相続を望むのか、理由をしっかり書いておくことが必要になります。
大体のイメージは掴めましたでしょうか?
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